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Global Commons Forum 2025 を開催

掲载日:2025年11月13日

はじめに: 地球システムの危機と経済変革の喫緊性
10月7日、东京大学グローバル?コモンズ?センター(颁骋颁)は、理化学研究所(理研)と共催し、「グローバル?コモンズ?フォーラム 2025」を、东京大学弥生讲堂一条ホール/オンラインのハイブリッド形式で开催しました。会场とオンライン合わせて约600名の参加がありました。

人类の活动を支える安定的でレジリエントな地球システムは、「グローバル?コモンズ」(人类の共有财产)です。しかし、前世纪半ば以降の急速な経済発展により、わたしたちは地球システムの限界を急速に超えつつあり、その影响が世界各地で経済や生活の安定を大きく胁かしています。しかしながら厂顿骋やパリ合意の进展は期待通りには进まず、昨今の地政学的な変动もあり、グローバル?コモンズの保全を目指す国际的な取り组みは、危机的状况にあります。

本年のフォーラムでは “Safeguarding Global Commons through Transition to Nature Positive Economy” (ネイチャー?ポジティブ経済へ移行し、グローバル?コモンズを守る)をテーマとし、グローバル?コモンズの保全のための新たな経済システムに向けた具体的な道筋の提示に取り组みました。特に、自然资本の评価と経済システムへの统合をめざした「ネイチャー?オン?ザ?バランスシート」イニシアティブ(自然资本の価値を経済の意思决定に取り込むことを目指すイニシアティブ)の绍介、公司における最新の取り组みと共に、社会実装に向けた议论が行われました。

开会挨拶:
開会挨拶では、五神真理事長(国立研究開発法人 理化学研究所)が、地球の限界を超えつつある現状に強い危機感を示すとともに、2030年の目標年を目前にしながらも「持続可能な開発目標(SDGs)」の達成にはまだ道半ばであることに触れました。そのうえで、科学の力と国際的な協力によって行動を起こすことの重要性を呼びかけました。本年のフォーラムが、「ネイチャー?ポジティブ経済への移行」をテーマに掲げ、「自然资本の评価」「地域の取り组みのグローバル化」「础滨ガバナンス」の3つの柱を中心に、科学?产业?政策?次世代が协働して地球の未来を议论する场となることへの期待を示しました。また、理研の新しい中长期计画や、东京大学颁骋颁およびポツダム気候影响研究所(笔滨碍)との国际的な连携の取り组みにも触れ、科学を通じて地球规模の课题解决に贡献していくことを述べました。

開会挨拶 五神真理事長(理研)

次に、石井菜穂子ダイレクター(东京大学颁骋颁)は、「最新の科学は、我々の経済システムがラディカルに変革される必要を示しています。人类が安全に活动できる未来を将来の世代に残すためには、科学分野における学际的统合だけでなく、ビジネス、政策、そして现実社会との连携が不可欠」と述べ、このフォーラムが目指す方向と期待を示しました。

開会挨拶 石井菜穂子ダイレクター(東京大学CGC)

基调讲演:
続く基調講演で、Thomas Crowther教授(Restor)は、社会経済課題に取り組む上で生態系の再生が重要であると主張しました。多様性が豊かな生態系は単一植林より50%以上多く炭素を貯留することができることからも、自然保護と経済成長の両立が可能であると指摘しました。貧困と环境破壊の悪循環を断ち、地域の土地管理者に資金を循環させる仕組みこそが解決策であると強調しました。さらに、Dominic Waughra氏 (WBCSD)からは、科学的知見をビジネスに有用なデータへと転換する必要性、すなわち炭素会計におけるGHGプロトコルのような「自然資本についての共通会計基準」の整備の必要性が訴えられました。

基調講演 Tom Crowther教授(Restor)


基調講演 Dominic Waughray氏(WBCSD)

特別講演: プラネタリー?ヘルスチェック 2025
Johan Rockström教授(ポツダム気候影響研究所)による特別講演では、地球の「健康状態」を診断する指標となる「プラネタリー?ヘルスチェック2025」から最新の研究成果が報告されました。地球システムを支える9つのプラネタリー?バウンダリーのうちの7つがすでに安全圏を超えており、特に今回新たに超過となった海洋については、酸性化?貧酸素化?乱獲などが深刻化していると指摘しました。地球は「複数の臓器に不調を抱えた患者」のような状態にある一方で、地域ごとの森林や水資源の管理が、地球全体の安定性にどのように影響するかを可視化できるようになったと説明し、ローカルとグローバルを結ぶ科学の力を強調しました。地球システムは危険域に近づいているが、まだ「行動の窓」は開かれており、もはや行動を先延ばしにする猶予はないと警告しました。

特別講演  Johan Rockström教授(ポツダム気候影響研究所)

セッション1: 成長と安定を支える、自然の資本化
科学とビジネスの間の断絶を埋め、自然資本を経済の意思決定の取り込むための道筋が議論されました。Mark Gough氏(Capitals Coalition)は「資本」という共通言語が科学と経済をつなぐとし、複数の制度を主体とした連携が不可欠であると強調しました。磯野裕之氏(王子ホールディングス株式会社)は、森林の多面的価値が未評価である問題を指摘し、IFSCでの国際連携を通じた価値基準づくりへの取り組みを紹介しました。Guido Schmidt-Traub氏(Systemiq)は、GDPには自然の価値が反映されていない現実を批判し、自然資本をインフラストラクチャーとみなすことの必要性を強調しました。また、投資誘発効果など政策の果たす重要性について述べました。さらに、Waughray氏は、エネルギー効率に対する日本でのトップランナー?アプローチに言及し、このような政策が企業にインセンティブを与え、自然への投資促進モデルになると述べました。セッションの総括として、政策?企業?学術の協働こそがシステム変革の鍵であることが確認されました。

セッション1 Capitalizing Nature for Growth and Stability

セッション2: 投資可能な資産としての自然 - 実現へのファストトラック
本セッションでは、自然資本の価値をどう「測り」「価格化」し、企業行動に組み込むかについて議論しました。原口真氏(MS&AD)は、TNFDの導入で日本が先行する要因として文化的背景と制度支援を挙げ、水源涵養プロジェクトで保険料割引を通じたインセンティブ設計を紹介しました。Rong Yu氏(S&P Global)は、貸付および投資における自然への依存性と信用リスクの関連性に対する関心の高まりについて述べました。自然関連リスクは企業の営業ライセンスにますます影響を与えつつあり、単にリスクの存在場所の特定だけでなく、財務的な観点からのリスク定量化が重要視されていると強調しました。Lee Howell氏(Villars Institute)は、AI、衛星、デジタルプラットフォームで実現可能が高まっている自然システムの即時かつ高精度なモニタリングについて述べました。生物多様性や生態系のデータが地域社会にも利益をもたらすような新しい市場メカニズム構築のために、「自然のデジタル?トークン化」を提唱しました。総括では、自然リスクを「資本コスト」に統合する潮流が始まっており、これが企業と金融のシステム変革に向けた強力なドライバーになると確認しました。

セッション2: The Fast Track to Nature as an Investable Asset

セッション3: 資本アプローチ - ケープタウンANCAサミットとの連携
アフリカの金融セクターが主導する自然資本アライアンス(ANCA)の実践を紹介しました。Dorothy Maseke氏(African Natural Capital Allicance Secretariat)は、アフリカGDPの65%が自然依存である現実からANCAが誕生し、130超の金融機関が参加していると説明しました。政策?規制、能力開発、データ整備、投資促進の4本柱での体系的な取り組み、特に中央銀行と連携した自然リスクのストレス?テスト導入について述べました。TNFDが「会話のきっかけ」として大きな効果を発揮したと評価した。今後は国際パートナーシップを拡大し、アジアなどとの協働も視野に入れる姿勢を表明しました。これを受け、Gough氏は、アフリカが受け身でなくルール形成の主導者となりつつあると強調し、グローバルな連携強化が課題であると総括しました。

セッション3: Capitals approach - Linking with ANCA Summit in Cape Town

セッション4: ネイチャー?ポジティブ経済のための信頼基盤構築 - グローバル?コモンズを支える地域行動
「自然をバランスシートに載せる」という課題について「ファミリー?セラピー」と題して、科学?金融?企業からの異なる分野の専門家が相互理解を深め、課題へアプローチを探りました。Rishi Kalra氏(Olam社)は、ミツバチ保全への年間投資が収穫量増加につながる事例を挙げ、「良い行い」と経済価値は両立すると主張しました。宮本泰俊氏(日本生命)は、地球全体の安定性が長期投資の基盤であるとし、科学指標を投資判断に組み込む「ネイチャー?ファイナンス」を紹介しました。持田恵一氏(理研 环境資源科学研究センター)は、理研?東大?PIKの3機関で進めている「プラネタリー?レジリエンス科学」‎‎について説明しました。「重要なのは环境システムを最適な方法で回復させることであり、自然生態系の保全と人為的な農業システムの両立には、蓄積したデータとモデル化に基づいて多様な解決策を統合すること」と強調しました。Crowther教授は、生態系の健全性(Ecological Integrity)は測定可能であり、「生物多様性は非財務的ではなく中核的情報」と述べました。総括では、科学?金融?企業が共通言語を持ち、因果関係を明確化することが今後の行動変革の鍵であり、「生態系の健全性と経済的成果との間に、受託者責任に基づく意思決定(fiduciary decisions)を下せるだけの明確な因果関係を確立できるか」という問いが、金融資本を自然へと向かわせる道筋になると締めくくりました。

セッション4: Building Trusted Infrastructure for Nature Positive Economy: Local Actions for Global Commons

セッション5: AIと高性能計算は答えとなるか? グローバル?コモンズの目標に向けた現代AIとそのインフラの光と影
松岡聡センター長(理研 計算科学研究センター)がモデレーターを務め、自然資本と持続可能な経済の実現に向けて、AI(人工知能)、HPC(高性能コンピューティング)、大規模データの活用がどのように貢献し得るかを議論しました。Martin Stuchtey氏(The Landbanking Group)は、自然を含めた資本がAIによって判断?分配される未来に備える必要性や、人類が「別の知性に置き換え可能な存在」として扱われる懸念を指摘しました。Thomas Schultess氏(スイス国立スーパーコンピューティング?センター)は、気象予報の分野での予測精度向上の実績を例に挙げ、オープンで透明性の高い科学的アプローチの重要性を強調しました。また、北野宏明氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所(Sony CSL))はAIの最大の貢献が、複雑系科学の限界を超える「科学者としてのAI」であると述べ、技術開発への強い期待を述べました。AIは自然資本の評価に不可欠なツールと認識された一方、AIやスーパーコンピューターが膨大な電力を消費するという現実も踏まえ、グローバル?コモンズの保全という目標のために新たにAIを設計し制御していくためのフレームワークが必要であることを確認しました。さらに、GAFAなどの少数の巨大テック企業が主導するAI開発の現状のもと、「グローバル?コモンズ(共有財)の理念と整合性のある、公平で透明性のあるAIモデル構築のためには、幅広いステークホルダーのネットワークを展開し、あらゆる文化や地域が公平に扱われる未来を築くことが鍵であるとの理解を共有しました。

セッション5: Will AI & HPC be the answer? The light and shadow of modern AI and its infrastructure towards Global Commons objectives

最终セッション:
藤井辉夫総长(东京大学)が同大学の2人の学生と登坛し、「グローバル?コモンズをどうしたら守れるか」をテーマに、福士谦介センター长(东京大学未来ビジョン研究センター)による司会のもとにディスカッションを展开しました。本フォーラムでの议论を踏まえ、セクター间の壁を越えた协働の実践を通じて自然の価値が経済の隅々にまで浸透することにより、真に持続可能で豊かな未来が筑かれることを确认し、本年度のフォーラムを缔めくくりました。

最终セッション: How to Govern the Global Commons. Conversation with Youth
 
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